■第31回全国都市緑化しずおかフェア 浜名湖花博2014 庭園出展コラム

今春開催されました第31回全国都市緑化しずおかフェア 浜名湖花博2014 出展庭園コンテストにおいて最優秀賞である国土交通大臣賞を受賞しましたのでご報告致します。初めて現場を確認したのは落葉も進む昨年の晩秋11月。その際、印象的だったのは10年前の浜名湖花博開催に合わせて植え込んだ美しく成長した樹々の姿とそれらがつくり出す美しい景観でした。

プラン段階ではその美しくしなやかに伸びた枝先1本1本の繊細さ、力強い幹が永遠に重なり合う豊かさ、また心地よい空間を構成する光、風、土etc.を活かす形を目指しました。「豊かな緑から溢れてくる」「美しい自然を求める」「水音、木漏れ日、薫る風に包まれる」空間をイメージに持ち、連日ドラフターに向き合ったことを思い出します。何パターンもプランを作成し、伝えたいことが形になっているか見返し違和感を感じる部分は修正する作業を着工間際まで繰り返しました。プランが固まれば即着工、工事期間は10日間。連日早朝から遅くまで作業を行い、設営最終日も真っ暗な中で完成を向かえたことを思い出します

工事中は現場とホテルを往復するストイックにものづくりに没頭できる充実した日々でした。作業して頂いた職人の方々もものづくりに魅せられたまっすぐな人々で早朝からの遅くまでの現場作業後に、仕上げイメージの共有や厳しい工期の中での段取りetc.のミーティングを連日行ったことも忘れられない想い出です。皆様のご協力とご尽力の末に国土交通大臣賞受賞という嬉しい一報を頂いた時は言葉では表現できない喜びと充実感を味わうことが出来ました。 開期中の2か月半の期間も2週間に一度は来場し、成熟していく作品の様子を見届けることができました。中でも私どもが創ったせせらぎの中にサワガニを見つけた時は思いがけず幸せな気持ちになれました。また閉会間際の初夏、夕刻に想いを込めてデザインしたシェルターの中で水音に包まれ、水面で揺れる枝葉のシルエットを眺めながら心地よい風を肌で感じられる贅沢な幸福感も味わえました。この幸福感をもたらしてくれる「自然の恵み」がいつまでも永遠に続きますように・・・心より願います。これからもものづくりを心から楽しみながら・・・Organic-gardenのかたちを探し続けます。

■作品タイトル「みらいの源泉」

－森は自然と人がいっしょに生きていく未来につながる。－
　森、そのすべてがサスティナブル。

■テーマコンセプト

出展テーマである「次代につなぐ創造性」「緑豊かな街」「花と緑」「水辺で奏でる未来の暮らし」という言葉から、「未来に残したい自然」「自然とふれあう癒し空間」「きれいな水や空気が存在する」といった人が生きていくための恩恵を与えてくれる「森」をイメージしました。 森には 水、土、光、風、緑 といった豊かな恵みが存在します。そのすべての要素を取り込み、森が与えてくれる自然と人がいっしょに生きていく未来の理想郷を、「水のサスティナブル」にスポットを当て「みらいの源泉」と名付け表現しました。 自然を取り込むOrganic-Shelter（*1）に包まれた中で 五感を通じて「みらいの源泉」を感じて頂き、「豊かな恵みを将来にわたって受け取っていくことの大切さ」を享受して頂ける空間を目指しました。

■デザインコンセプト

森の木立をイメージした杉角材のシェルターが、周囲の繊細で透明感のある樹々の枝葉と秀逸なコントラストを描き、リズミカルでモダンな造形美を表現します。自然の摂理を意識した傾斜（地軸の傾きと同じ23°傾斜）を持たせたシェルターに包まれるアプローチは、春の訪れを告げる周囲の季節の移ろいと重なり合い景色のハーモニーを存分に感じて頂けるよう計画しました。森の中で湧き出した 3つの源泉 から流れるせせらぎの水音が空間をやさしく包み込み、自然がもたらしてくれる心地よさと サスティナブルな自然の恵みの大切さを享受できるデザインとしました。

*1：『Organic-Shelter』とは･･･
アメリカの建築家フランク・ロイド・ライト氏によって提唱された現代の建築様式「オーガニック建築」に通ずる造語。オーガニック建築とは、「外からあてがわれた形態に合わせて造られるようなものではなく、その建築が必要とする すべての要素が調和し、内から外へと発展していく建築」のこと。つまり、自然と調和した形と精神を建築で表現するというものです。その精神は自然を建築のモデルと捉え、「自然と共存していこう」ということに基づく。今回の作品では、この思想に基づき自然と共に生きていく象徴としてOrganic-Shelterをデザインしました。